【訪問記】工作舎の覚醒(feat. 機関精神史)


2019年11月29日、最新号である『機関精神史』二号をお渡しするため、刊行人・高山えい子と編集人・後藤護は「生ける伝説」といっていいであろう出版社、工作舎のオフィスを訪問しました。じつはこの二号は「文学と科学のインターフェイス」(M・H・ニコルソン)を探る工作舎オマージュな号でもあります。


そしてこの訪問に至る影の功労者であられるのが、二号でインタヴューしたBH総帥ヒロ・ヒライさん(筆名:玉之井)。『ルネサンス・バロックのブックガイド』(工作舎)の刊行記念イヴェントで山本貴光さんとトークした際、工作舎営業の岩下裕子さんに紹介していただいたのが、思えばそもそものきっかけでした。「人的交流史」を謳う弊誌としては、これ以上ない展開。


高田馬場駅からトコトコ歩くこと15分。早稲田大学の理工系キャンパスに近い立地で、ほかには近くに学習院女子大学などもあっていかにも学生街。えい子婆さんと合流すると、さっそく「ラムダックスビル」の12階にあるオフィスへと突撃です!

(工作舎の下にある「ジャパン・ナウ」の名札につられて)「機関精神史・なう」と電話越しに唱える(?)後藤。


出迎えてくれた営業の岩下さんに奥へと導かれつつも後藤とえい子の目を奪ったのは、優れた人文書のみがもつ「アウラ」を放った本棚。以下に何枚か写真を掲げましょう。



高山宏棚。やはり基本。


工作舎に来たぜ! という感じの棚。


『遊』のバックナンバーてんこ盛り!圧巻! (松岡正剛さんにいつかインタヴューしたいけど、瞬殺されそうで怖い)


という感じで目移りしつつテーブルにたどりつき、座って待っていると現れたのは工作舎の編集人・石原剛一郎さん。高山宏大人とも関係の深い名編集者であられ、あまりにも多くのことを学んだので以下に箇条書きします。


・『オルフェウスの声』を翻訳するために由良君美は原書をもってるにも関わらず全ページのコピーを要求。折りたたんで電車のなかでちょっとずつ訳す予定だったらしい。

・「平凡社の伝説の編集人」二宮隆洋のカラオケの十八番は安全地帯(!)

・四方田犬彦のデビュー作『リュミエールの閾 映画への漸進的欲望』(朝日出版社 1980年)は、「謎のハイデガーおじさん」が中野幹隆に紹介してくれて実現したという(ちなみに中野は、その突然押しかけてきたおじさんが何者か知らなかったという)。

・いまも駒場にある古本屋・河野書店を由良君美は使っていたらしく、由良が売ったと思しきおそろしくレベルの高い洋書が店内には多かったという。


・デレク・ベイリーの伝説的名著『インプロヴィゼーション』の担当編集、それがなんと石原さん。『薔薇十字の覚醒』も石原さんであるというから、この幅広さにはただただ脱帽。(カンパニー社・工藤遥さんとのTwitter上のサン・ラのやり取りを見てくださっていて、「組織論」としてサン・ラ・オーケストラを見直す価値があるという示唆も。)


とまあここには書ききれないほどに石原さんが「情報爆発」(アン・ブレア)なさっていたのですが、そうやって話が弾んでいるところに十川治江さん登場。取締役にして、松岡正剛「超」大人とともに『遊』を創立したレジェンドであるのでこちらもドキドキでしたが、第一声は「『摩天楼とアメリカの欲望」を紹介してくれてありがとう!」というもの。


そうそう、拙著『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン)の最終章でこの本を最大限活用したこともあって、ツイッターで紹介したのでした。NYの摩天楼を論じるのにキルヒャーが顔を出す「工作舎ぶり」なのですが、あまりヒットしなかった一冊だったとのこと。とはいえおもしろさは破格ですので、版元の書籍紹介ページを眺めてみてください。目次や関連文献やばいです!


また石原さんは四方田犬彦さんの最新刊『女王の肖像ーー切手蒐集の秘かな愉しみ』の担当編集でもあられ、切手の美学・図像学・政治学のおもしろさをレクチャーしていただきました(戦時下のプロパガンダ誌『FRONT』のように、切手を政治力学の産物として読み込むこともできるのです)。

図:四方田さんが最大のオマージュを捧げた内藤陽介氏のレアグルーヴ的著書『北朝鮮事典』。切手の政治学から北朝鮮を読み解く名著。


そして四方田さんのこの切手本を買うと、特別に切手と版元特製の捺印がもらえるとのことで、えい子と後藤もGETしちゃいました!


豊穣の女神アルテミスVer


四方田さんが食べたというケーキVer



工作舎の「若手のホープ」門谷風花さんがハンコを押してくれました! 「切手マニア的にはハンコがあるほうが情報量が多く、価値が高い」(石原剛一郎)


というわけで、時計をみれば二時間半もの長居をしていました。工作舎のみなさま、「覚醒」させていただき本当にありがとうございました!!!



帰り際に「覚醒」し、「昇竜拳」(猫ひろし)するウルトラ・ヘルメティックMC(31歳)。撮影者は後藤より「三倍」お年をめされた高山・トリスメギストス(三倍偉大な)・えい子(93歳)。


文責・後藤護(薔薇十字団員)

0コメント

  • 1000 / 1000