學魔書庫訪問記——本棚天界篇➊


とうとう「學魔」こと高山宏大人の書庫(@大妻女子大多摩キャンパス)に行ってまいりました!
以前書いた記事で「撮影隊を差し向けたい」と紹介した書庫です。


2021年9月7日(火)14時に唐木田駅前集合ということで、当日は早起きしてリサイクルショップでリュックサックを購入(書庫の本を好きなだけ取って行け、という話だったので)、學魔へのお土産(船橋屋のくず餅)も吉祥寺デパ地下で買って30分前に着く予定でしたが、小田急線の路線を間違えて本厚木方向に行ってしまい、逆に30分遅刻……あきれて帰ろうとする學魔に猛ダッシュで何とか追いついて〈死〉を免れました(自殺して魂だけ向かうべきか悩みました like a 菊花の契)。本当にすいませんでした…


まあ読者に関係のない個人的前置きはこの辺にして、さっそく書物の宇宙遊泳を始めましょう。遅刻したのと、自分の戴く分を確保するので精一杯で——格安セール品を奪い合う戦闘的おばちゃんのようなマインドでして——写真があまり上出来というわけではありませんがご容赦ください


写真が100枚近いので、2回に分けて紹介できればと思ってます。もう脈絡なくジャンジャン出していきます。學魔の本棚宇宙の構成・統一原理は各自、断片から推し量っていただければ。今回はメインの本棚に収められた書物群を紹介しましょう(といってそれだけでも一回で収まりきるかどうか…)。


まずは喰らいやがれ、とばかりに一枚。一番左上に山口昌男、その下に中沢新一がまとめて置いてありました。この二人への格別の評価が伺えます。ハスミ大嫌いを公言する學魔ですが、『「ボヴァリー夫人」論』はちゃんと置いてるあたりに知的誠実さを感じます。


ここはフラマリオン社版のバルトルシャイティス『アナモルフォーシス』や『The Icy Fire』という本が気になりました(が、重量オーバーで持ち出し果たせず)。代わりに?ポミアン『コレクション』を戴きました。下段に寝かせてある『段差と階段(Steps & Stairways)』という得も言われぬテーマのバカでかい本はなんでしょう??

ここは本気のマニエリスム棚。ホッケの『文学におけるマニエリスム』イタリア語訳、Claude Gilbert DUBOIS 『Le Maniérisme 』(Paris, P.U.F. 1979)という耳慣れぬ本も。『MANIERISMO E LITTERATURA』という本も不詳(開いてみればよかった)。この凄まじい棚のなかに木村守一さんの自主製作本『絹と立方体』『声と三稜鏡』がちゃっかし入ってるのが凄いです。

窓際にある本棚にはコリン・ウィルソン『アウトサイダー』原書が面陳されております。「學魔が嫉妬した本」という企画でも選書されていたので、やはり思い入れあるようです。当日まったく気づきませんでしたが『Prophetic Water(予言する水)』って気になりますね。Seelyeは學魔が白鯨論を書くときに参照したあのジョン・シーリーかと思われます。下の段には『Decadent Style』という本がありますが、全体的にデカダン関係の研究書が目立ったというのも特筆すべき点かもしれません。

中沢新一さんとの対談で「前田耕作さんの新刊『パラムナード』読んだ?」と言った學魔、いまだに本棚にありました。僕が大学院生の頃に學魔からよく薦められた『ショック・ドクトリン』や『災害ユートピア』もやはり良いポジション。

法政大学出版局コーナー。ユベルマン『イメージの前で』が…!(取り忘れた)。写真に映ってませんが、後ろの列には法政から出てるミシェル・セールがほぼ勢ぞろいでした。

『Trompe-L'oeil: Painted Architecture』や『詳注版フランケンシュタイン』の二冊欲しい…!! 当日焦ってたので気づきませんでした( ノД`)シクシク…

ここは澁澤・種村系列の本棚ですね。大体持ってるなと油断してましたが、『ヴォルプスヴェーデふたたび』、『怪奇幻想の文学』(編:紀田順一郎、荒俣宏 新人物往来社)は欲しかった…(なんだか写真で振り返ると後悔ばかり募るな、、、)

ここはお洒落棚? 年号をレトリックとして駆使する學魔だけあってセイゴー監修『情報の歴史』の使い込まれ方が半端じゃありません。

大型本コーナー。『魔術のパノラマ』、『フリーメイソン』、『アルス・エロチカ』といった具合に、魔術・秘密結社・エロスが隣り合うのが學魔脳👿

フレッチャーの『アレゴリー』原書。そしてリハチョフの『庭園の詩学』は後でもらおうと思ってたら、置き忘れてしまいました。慙愧Σ(´∀`;)

ここは學魔の「国際日本学」(っていったい何なんだろう? この学科修了した僕もいまだにわかりません)のコーナーです。北斎中心。『Manga fron the Floating World』がヤバそう。

ここはいかにも學魔ファン垂涎の棚。絶版&高額のありな本をごっそり頂戴しました。ちなみに學魔が暗唱できるレベルで読み込んだハンス・ゼードルマイヤー『中心の喪失』(横置き)もありますね。「並みの大学教授三人分」(高山宏)と評されたタレント山田吾郎はザルツブルク留学してこのハンス・ゼードルマイヤーに習う予定だった、とみうらじゅんのラジオ番組『サブカルジェッター』ゲスト出演回で話してました(沸騰したお湯を股間にこぼして、そそり立つたびに皮がズル剥けになる水ぶくれ状態で黒澤明『影武者』にエキストラ出演した、というエピソード直後のゼードルマイヤー語りでした)。

この棚はヤンポリスキイ翻訳でお世話になってる澤直哉パイセンに、絶対読んだ方がいいと薦められていたリングボーム『カンディンスキー』、古書市場に存在するのか?というくらい見かけない『描写の芸術』、カラザース『記憶術と書物』を見つけて余は満足じゃ状態でしたが、よく見るとジャクソン・コープとか他にもめぼしい本が沢山。下の棚にはゴンブリッチと少年マガジンを支えたイラストレーター大伴昌司の本が平然と並びます(マンガ論者に最低限必要な教養、と言わんばかりに!)


このあたりは超大型本で持ち帰り困難でした。漱石の顔がチラリ。右端に映り込むOEDの存在感!!!

さきほどの北斎棚の真下はアルチンボルド棚。『こんちわ、顔面フルーツ野郎!』という本の後ろには熊楠全集が完備されてました(『こんちわ』も欲しかったのですが、図書館ラベルの付いた本は持ち出し不可と釘を刺されていたので断念)


一番上のハイレベルな日本語本に気を取られ、前々から狙ってた『Music in Art』を取り忘れる…いよいよ辛くなってきました(´;ω;`)ウゥゥ

画文共鳴テーマの本が散見されます。なお機関精神史4号では『藝術の国日本 画文共鳴』の芳賀徹さんに大学院で習っていた「あの方」にインタヴューしました(ちょい告知)

『描写の芸術』原書があります(ありなの邦訳版を個人的に戴きました)。
いまさらですが「ほろよい」と「氷結」の空き缶などから、學魔のチューハイ好きが目立ちます。

本棚篇に入れるか微妙なラインですが、澁澤・種村棚の上にもどさっと積まれてました。板切れがへし折れないか見てて不安でしたガタガタ(((゚Д゚)))ガタガタ

『旅行の黄金時代』『パスポート』『作られた現実』『パラダイス』などの洋書タイトルから、スタフォード『実体への旅』ラインの思想の流れがちらちら見えます。

入ってすぐの背の低い本棚には『芥川龍之介全集』。僕が来る前に入った「ヴァリューブックス」の査定班は、漱石全集とか書き込みのない、比較的売れそうな本だけ持ってったと聞きました。ちなみに最初學魔の蔵書と知らなかったらしく、途中で気づくと「が…學魔の本にわたしは触れている…!」と感激のあまり、査定額を全体に引き上げたそうです。ヴァリューにも粋な人がおるものよ(ちなみにでっかいネズミの死体二匹も見つけてくれたとか🐀)

部屋の隅にある地味目の棚ですが、學魔の東アジア方面への関心を知るうえで重要な棚かも。東洋文庫がまとめて置いてあったり。とはいえやはり寂しいのか、荒俣宏『ホラー小説講義』が突如闖入。荒俣さんの本は、なぜかカバーと帯だけが机の上に投げ出されていたりと、いろいろ弄った形跡がありました。やっぱ好きなんだなあ(しみじみ)

加藤周一著作集を持ってるのがかなり意外でした。面陳されてるエロい本でマジメとフマジメのバランス(?)を取ってる感じがします。

さて「本棚天界篇」もいよいよ終了です。広大なる書物の宇宙遊泳、いかがでしたか?
しかし僕の見るところ、真にエッセンシャルな本は意外と床にごっそり積み上げられていた大量の「本塊」のなかにこそ眠っていました。というわけで、次回は紹介しきれなかった「本塊魔道篇」をやる予定です。乞うご期待。


最後に机の下にあった、息子さんの昔使ってたと思しき「おどうぐばこ」でお別れです。
『市民ケーン』における「そり」のような、幼年時代の愛に包まれたノスタルジアに僕は部屋で一人泣きそうになりました🐰


余談。機関精神史の鬼才ランシブルが即座にへたうま模写し、ローファイな分身を作り出しました。

【追記 2021.9.13.】

ホームページ掲載後、なんと學魔から手紙が届きました(/・ω・)/

駒場助手時代、學魔は参宮橋の散髪屋下宿に住んでいたことが発覚✂

私は36冊持ち帰るだけで二日筋肉痛になりましたが、學魔は毎晩50冊近く運んでたとか📚

裏側を見てみましょう。

「いくらネットで無重力な勉強たって、基本はいずれ床が抜けるこの知の「重み」よ。いとしいねえ」とあります。これぞまさに「重力の恩寵」(シモーヌ・ヴェイユ)ではないでしょうか?

(「怪鳥の爪」で隠した部分、學魔じきじきの重要な原稿オファーでした)


文・写真=後藤護

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